ポーランドの雪山を前に敗れた日

2/24(火)

【ザコパネ ～ ポプラド】

雪山登山を断念した

私には装備とスキルが足りなかった…

…遡ること数日前…

私はこの日、ある場所を目指していた

ポーランドの南の国

スロバキアにある湖

ここザコパネからは、山を越えて、スロバキアに入国できる

その湖は、スロバキアについて調べていた時に知った

昨年12月にYou Tubeにアップされると同時に世界中の多くの人々を魅了した

私もその中の一人

たった38秒の動画には、何が映っていたのか？

そこには、氷った湖を男性が歩いている映像

彼の足下をカメラがとらえた瞬間、驚嘆した

ガラスのように透明なのだ

湖の底の石がはっきりと写し出されていた

一瞬でここへ行ってみたいと虜になった

そして、今朝8時に宿を出た

2日かけて、その場所を目指す行程

食料も買っておいた

そのため、いつもより重いザックを担いでその日は出発した

9時に登山口に到着

国立公園内なので、入場料を払った

5ズロティ(約160円)

そしていざ登山開始

足下は一面真っ白

トレースがあるので、それを辿っていけば目的地につけるはず

このときは、安易にそう考えていた

他にもトレッキングの観光客らがいた

登っていくに連れ、急な斜面や険しい道のりが増えてきた

軍人のように迷彩柄の服とバックパックをもった15人くらいの団体にも遭遇

途中の集落に来た辺りだろうか

雪がちらつき始めた

この日は何かが違った

普段汗をあまりかかない私

余りにも暑かったので、途中で一枚ジャケットを脱いだ

すると、下のTシャツはびっしょりと濡れていた

こんなに寒い地域に来たはずなのに

アドレナリンが出ていたのか、手袋をしなくても手は動くし指もかじかんでいなかった

歩き始めて、1時間半

道も狭くなり、足を滑らせればそのまま崖

雪を被った木々よりも岩々が目立ち始めた

1つ目の湖に到着

前を行っていたポーランド人に話しかけられた

｢今日はどこまで進むのか｣

｢この山は始めてか｣

次のポイントまでは4、5時間くらいという情報もくれた

氷った湖を横に先へと進んだ

が、さっきまであったトレースはここで途切れていた

ここから先は私が道を作らないといけない

が、そんなことはやったこともなく地図も持っていない素人

できるはずもない

と、考えていた矢先に雪に足を取られた

深いところだと腰ラッセル

はい上がるのにも一苦労

簡単な装備と経験しかない私は決断

きびすを返した

先程のポーランド人が言っていたことも頭によぎった

彼は向こうの山を指さし、

｢天気が悪い｣

｢僕は様子を見て、次のポイントへは明日向かおうと思う｣

彼が指さす先を見ると、確かに山の向こうには厚い雲がかかっていた

無謀な挑戦はしない

ただ、スロバキアにある透明に氷った湖は見てみたかった

また、登山を途中で断念したのはこれが初めて

とても悔しかった

時間が早かったこともあり、下山してバスでスロバキアを目指すことにした

やはり、この選択は正しかった

下山しても天気は悪くなる一方

登りで見晴らしが良かった場所も、視界が白く遮られる

バスターミナルからスロバキア国境近くを通るバスに乗り込んだ

13:30発

ミニバス

10ズロティ(約320円)

手持ちのコインがなく、2ユーロ+2ズロティで乗せてくれた

バスはザコパネの有名スポットのモレスキーオコという湖行

20分ちょっとで、一人バスを降ろされた

小さな橋を渡ると、そこはスロバキアだった

近くにインフォメーションがあったので、中へ入った

バスの時間を聞くと、もうすぐ来るらしい

私の他に、ワルシャワ出身のポーランド人が1人いた

これから、面接に向かう予定らしい

航空会社勤務を希望のよう

彼からいろんなことを教えてもらった

スロバキアが通貨をユーロに変えたことで起きた弊害など

これから向かう先はポプラドという街

以前、ポーランドのザコパネからスロバキアのポプラドまでは直通のバスがあったようだ

しかし、スロバキアがユーロを使用するにあたり物価も上がった

それに伴い、両者の主張が噛み合わなくなり廃止されたとのこと

また、ポーランド人はスロバキアにお酒を買いに行っていた

なぜなら、その方が安いから

だが、今は立場が逆転

スロバキア人がポーランドにお酒を買いに来ているらしい

そんな話をしていると、バスがやって来た

14:30発

2.6ユーロ(約350円)

出発までの時間、運転手は座席に寝そべって、車内にも関わらずタバコをふかしていた

出発後は地元民やスキー帰りの客を乗せながらポプラドに到着

ポーランド人の彼はポプラドの手前の町で降りた

来月で閉めるというホステルにチェックインすると、疲れた体をすぐに休めた

宿泊客もほとんどいない

スタッフも常駐しておらず、隣のレストランから電話をかけてもらい、30分待った

6人部屋のルームメイトはポーランド人1人だけ

ただし、彼は耳が不自由のようだ

登山用に買っておいた食料を食べて、その日は休んだ

2015年2月　ポーランド　ザコパネの雪山